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コモアブリッジ |
全国には、異様な人工建造物がある。巨大なタワーやトンネル、橋、・・・。どの建造物も必要だから存在するはずである。異様かどうかは、建造物の置かれた環境にもよる。高層ビルも新宿にあれば異様ではないが、山中や海上にあれば、異様だろう。そして、非難もされるであろう。甲州街道郡内にそんな建造物がある。
JR中央線、四方津(しおつ)駅から北へ、丘の上に向かって1本の巨大なガラスチューブが伸びている。コモアブリッジである。”コモア”とは、丘の上にある新興住宅街の名前である。ちゃんとした住所名である。丘の下と丘の上のをつないでいるのが、コモアブリッジである。ブリッジなどと言うと、川にかかる橋を連想してしまうが、ガラスチューブの中には、エスカレーター6機と斜行エレベーターが2機ある。エスカレーターは通勤・通学時間帯に合わせて、上下逆向きに運行されている。外部には下から上まで、遊歩道ができており、コモアブリッジの真下を歩くことができる。草むらのヘビや鳥達に驚かされながら歩くと、その圧倒的な大きさがよく分かる。
![]() コモアブリッジの夏 |
![]() コモアブリッジ 冬の朝 |
さて、このコモアブリッジは私達に様々なことを教えてくれると言う意味で、立派なご当地の名物である。
1.自然の中の巨大人工産物
コモアブリッジは、完全な自然ではないが、一応緑に囲まれて存在している。郡内中央線の左右は、スギやヒノキも多いが、雑木的である。日本に人の手の全く入っていない、本当の自然林はないという話しもあるようだが、緑に囲まれているということで、人間は本来の心の安らぎに近づける。コモアブリッジはそんな中に存在している。しかも、その他の人工物と比べるとかなり近代的であり、鉄腕アトムの世界が突然現われたかのようである。のんびりした山間の谷間に現われる巨大建造物は、古代遺跡文明のようにも感じられる。
2.公共交通路
コモアブリッジは一応公共の交通機関ということになっている。つまり、ガラスチューブは道であり、その中のエレベーターやエスカレーターは乗り物ということなのだろう。全国的にも珍しいらしく、山梨県内の大学生が研究取材やアンケート調査をすることもある。盛んにマスコミが来たこともある。
3.東洋一の自然破壊のシンボル
コモアブリッジが動き出して2、3年経ったころ、山岳雑誌に「東洋一の自然破壊のシンボル」と掲載されたことがある。確かに、山の上に家を建ておいて、不便だからと、山を削って巨大建造物を造るというのは、自然破壊であろう。しかも、これだけの巨大なものとなると、東洋一と称されてもやむを得まい。しかし、持ち家が推奨されながら、住むところはない。通勤圏内の山間に住宅街を作るのは今の時代、ある程度仕方ないように思う。そもそも自然破壊のシンボルという言う人達が今住んでいるところだってかつては自然だったはずである。千駄ヶ谷は、その昔「毎日馬千頭の茅がとれた」というではないか。
人が住めば、人口の少なかった街にも活気が出る。行政には住民税が入り、従来からの住民にも少なからず恩恵はあるだろう。田舎は田舎で自然があるのがいいのだから、不便でもそのままにしておこうというのは、都会に住む人間のエゴのような気がする。自分たちは日頃、精々便利な生活をしていて、気が向くとやって来て、その土地の不便・苦労もそっちのけで、「やっぱり自然はいいわねェ」なんていうのは、虫が良すぎる気がしなくもない。丘の上に暮らさざるを得ないお年よりはどうやって駅と往復しろというのだろう。
いろいろな立場で、いろいろな意見があるだろう。確かにコモアブリッジは建設に際し、自然を破壊したかもしれないが、結果的に今は自然とかなり調和している、私はそう思う。
こんな風に、いろいろ考えさせてくれるコモアブリッジは、ご当地の名物である。
エスカレーターの時間
そんなコモアブリッジであるが、エスカレーターの所要時間を調べてみた。すなわち、エスカレーターに乗っている時間を測ったわけである。エスカレータ6機のうち2機は非常に短いので対象にしなかった。結果は次ぎのようになった。
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それぞれの4機のエスカレータの横には照明灯が設置されているのだが、この数と各エレベーターの所要時間を比較してみた。
No1 | No2 | No3 | No4 | |
上下所要時間の平均 | 1.000 | 1.001 | 0.713 | 0.858 |
街灯照明の数 | 10本 | 10本 | 6本 | 8本 |
街頭照明の明るさが同じだとすると、No3のエレベーターが一番明るいということになる。